2010年靖国神社でお花見

昨日は靖国神社のお花見に行って来た。
後輩の何人かがフレックスで仕事を切り上げて場所取りに行っていてくれたので私も仕事を終えてダッシュ靖国神社に向かい、大きな鳥居をくぐった時点で電話をして合流。


お花見の場所取りは新人さんの雑用、みたいなイメージがあるけど実は私はやってみたかったりする。
ぽかぽかした春の日に満開の桜の下、大きなレジャーシートに寝っ転がって本を読んだりお昼寝したりゲームしたりだなんて幸せ過ぎると思う。


後輩の後に付いて人の間をぬって行き、桜の花の真下一面にござが敷かれた場所の一画に会社のメンバが集まっている場所に辿り着いた。
上を見上げると桜。でも明るいうちに桜を見たいなと急いで来たのにちょっと暗くなってきてしまっていて内心しょんぼりする。夜桜もいいけど私はお日様の照っている時にうららかにピンクの桜を眺めるのが好きなのだ。でもまあせっかくのお花見だし、と屋台で買った食べ物を食べたりビールを飲んだり合間に桜を見上げてうむ、としたりして楽しむ。


食べ物では築地に住んでらっしゃる先輩が松露というお店の玉子焼きを持ち込んでくださっていたのだが、それがすごく美味しかった。甘い系の玉子焼き。私は甘いのはそんなに好きじゃないけどここのは美味しかった。ふわふわ、と言うよりはしっとり系。口に入れるとお出汁がじゅわ〜っと染み出してきて、ほんとあれはなんだったんだろう。お出汁も何なのかなあ。昆布かなあ。なんとも上品だけどしっかりと主張していて。そしてまた甘いのは甘いんだけどそれがまた旨みという感じで必要不可欠な甘さで、本当に美味しかった。


そんなこんなで桜を眺めたり飲んだり食べたりしていると、続々と仕事終わりのみんなが合流してきた。気が付くとまわりのござも仕事帰りのサラリーマン達でいっぱいだ。陣地の拡張はできないので、みんなでぎゅーっと詰めて座る。むう、狭い。でもそれもまた楽しい。


でもいいかげん窮屈なのに疲れてきたし、お腹もいっぱいになったので一人でお散歩に出ることにした。コートを羽織って、ぽっけにお財布と携帯だけを入れて、じゃちょっと行ってくるねって出掛ける。


お目当ては武道館!以前ライブを見に武道館に来た時に「これ全部桜だよね。春に来たら綺麗だろうなあ」って気になっていたし、今日駅から神社に向かう途中にちらっと見たら本当に綺麗だったのでこれはもう行っておかなければならないなと。


靖国神社から出て、道を歩く。そこかしこに桜が植わっている。道を歩く人たちもみんな楽しそうに友人と話していたりして、そこらじゅうの空気が春に満ちている感じがする。
その中で一人てぶらで歩いているとなんとも言えない開放感でこのままどこかに消えたら春の空気にとけていけるような気がしてきたけど勿論そんなことはないので大人しく、しかし一人ご満悦で散歩を楽しむ。


武道館に向かう途中、終わりが見えないほど奥まで続く桜並木を人々がゆっくり通っている場所に出会った。何かな、と見るとここが千鳥ヶ淵らしい。なるほどここが千鳥ヶ淵かさすが綺麗だなと思うもののあまりにも人が多く、迷い込むと帰って来られなくなりそうだったのでそのまま武道館を目指すことにした。


千鳥ヶ淵は関西で言う造幣局なのね、通り抜けなのね、なんて考えつつ歩いていると武道館まではすぐだった。ここにも勿論桜を楽しむ人はいるけど、ライトアップされていないこともあってそんなに混んではいない。


よしよし、とまずは武道館の入り口にある重厚な門を背景に桜を楽しむ。
次にお堀の側に寄って桜を楽しむ。
土手の上に植わった桜の枝が土手を這うように伸び、それが花をつけるもんだから土手全体に桜が敷き詰められたように見えて本当に見事だ。暗いお堀の水がたゆたゆと光を反射し、動きがあって見ていて飽きない。お堀を挟んだ対岸にはライトアップされた桜並木があって、それがさっきの千鳥ヶ淵。よく見ると人々がゆっくり歩いて行くのが見える。


以前友人が「千鳥ヶ淵はマジすごかった。視界一面が桜で埋め尽くされて桃源郷とはまさにこのことかと思った」なんて言っていたけどなるほどあれは桃源郷ならぬ桜源郷だなあなんて思いながら千鳥ヶ淵を眺める。月明りと街灯くらいしか灯りのないこちらから眺めると、千鳥ヶ淵はそこだけが明るく夢のように美しくなんだか彼岸の光景のように幸せに浮かび上がっている。


お堀の桜を眺めるのに満足したのでぶらぶらと門をくぐって武道館の方に向かう。昨日は坂本真綾のライブが行われていたみたいだけど、今日は何もやっていないみたい。
そろそろ桜が途切れてきたのでくるりと向きを変えて戻ることにする。と、強い風が吹いてきた。桜は大丈夫かなと見るけど、花びらが散る気配が全く無い。咲き始めは意外と強いんだなと新たな発見があった。花びらは舞い散らなかったけど、どういうわけか花が4つほど付いた小さな枝が落ちてきた。すぐさま拾ってみて香りをかぐ。私はこれまで桜の花に香りは無いと思っていたんだけど、たった今しがた木から落ちてきた咲き始めの桜の花からはほんのり桜の薫りがした。


拾った桜の花をかぎながらみんなのところへ帰る。
私が花を食べられる生物だったらこのままぱくって食べちゃうのに、と思うほどその桜の花は可愛い。


歩道橋を渡っている時に後輩の一人からメールが来た。
「心配かけてごめんね今から帰るよ」と返信してそのまま歩く。
参道に入り屋台街を抜けている時にまた同じ後輩から今度は電話が来た。なんだろう、と取った瞬間に切れたのでやや不可解に思いながら、携帯のディスプレイから顔を上げると、雑踏の中に後輩が立っていた。


後輩も散歩がしたくなったらしいのでまたUターンしていましがた戻ってきた場所に向かう。
武道館は後輩もたいそう気に入ってくれたようでよかった。
千鳥ヶ淵は相変わらず凄い人だったので入り口からだけ見て、ついでにコンビニで買い物をしてみんなのところに帰った。


みんなのところに帰るとだいぶみんなもうできあがっていた。ぎゅうーと詰めて無理矢理座って、その後はずっと飲んだりして10時くらいに解散になった。


解散の後、もう一度武道館が見たいなあとそっちに向かった。後輩もついて来た。
千鳥ヶ淵にさしかかると、なんとまあ人がほとんどいないじゃないですか!
そうか、ライトアップが落ちたからだね、なんて言いつつ、街灯やビルの灯りで充分に明るかったので奥に進んでみることにした。


一面の桜に感動していると折しも満月に近い月が顔を出した。
桜と月。贅沢。
こちらも桜のトンネルだし、お堀を挟んだ対岸もまた桜の巨木が何本も植わっていて実に見事だ。ゆっくりと歩きながら桜を楽しむ。歩いていると風に乗ってまた桜の薫りがした。やっぱり咲き始めは薫るみたい。これまでのお花見は散る寸前の満開の頃にしかしたことが無くて知らなかった。



だいぶ奥まで進むと道を挟んだ向かい側によさげなダイニングバーを見付けた。全面ガラス貼りになってるしここなら桜を見ながらご飯が食べられるねえ、でも後ろ向きに座ってる人は残念ですね、なんて話をした。


後輩がところでこのダイニングバーの上は何になっているんでしょう、と言い出す。
見るとお洒落な窓が並んでいる。
オフィスビルじゃなさそうマンションじゃない?マンションかなあ。なんて言いつつ二人揃ってiPhoneを取り出しそれぞれMapを起動して同時に「うーん」と唸る。この東京のど真ん中に立っているビルは「パークマンション千鳥ヶ淵」だった。


「マンションかあ」
「はー、いいなあ」
「こういうとこに住みたいなあ」
「ですよねえ」
「なんだろやっぱコンサルとか!?」
「いやー、むしろ在宅で仕事とか」
「そっちか!」
「でも居心地がよすぎて仕事にならなさそう」
「そうだねえ」
「あ、ベンツ」
「ベンツ似合うなあ」


なんて話しつつぶらぶら歩いていたら桜並木の端っこまで辿り着いた。いつも思うんだけど皇居のこんな近くに高速道路を通すのはすごいよなあ。どうしよう、と後輩と話し合って九段下まで戻らずに半蔵門まで歩いて行って地下鉄に乗ることにした。


細かい道はiPhoneを覗き込みつつ後輩がナビしてくれたので、私はまわりを見ながら気楽に歩くことにする。半蔵門までの道がまた落ち着いた雰囲気で、かっこいいマンションがいくつも立って、ゆるい坂まであったりしていい場所だった。
後輩と、このマンションがいいあのマンションのが好きなど勝手なことを言いつつ歩く。
ここらへん電車の駅無いですよねえなんて話になったけど、こういう所に住む人はそもそも電車にあまり乗らないんじゃないかと思った。
あと、こういう落ち着いた住宅街は関西だとけっこう普通にあるけど東京だと高いとこしか無いよねえ、なんて話もした。


そうこうするうちに半蔵門駅に着いたので後輩とばいばいしておうちに帰った。楽しかった。