シン・エヴァンゲリオン劇場版

さらば、全てのエヴァンゲリオン

 

終わるのかな、本当に終わるのかな、なんて思いつつ、これまでの監督の様子を見ていると終わるんだろうなと思っていた。でも終わらないというのもあるのかもしれない、と、ちょっと冗談交じりのようなふりをして、少し希望を持っていたのだと思う。

 

WikipediaによるとTVシリーズの第一話が放送されたのが1995年。早生まれの私はその時中学2年生の14歳で、つまりはシンジくんたちと同じ歳だった。なんて言いつつ、私がエヴァンゲリオンを初めて見たのはキッズステーションだかテレビ大阪だかの何度目かの再放送でもう高校生になっていたのだけれど。でも放送当時にシンジくんたちと同じ歳だというのは嬉しかったし、逆に2015年になるとミサトさんさえも抜いてしまうというのは何かの間違いではないかと何度も計算しなおしては計算結果が変わるはずもなくその度に落胆していた。

まだ実家にいた高校生の頃、エヴァンゲリオンを一緒に見てくれていたのは2つ下の弟だった。VHSに撮りためたエヴァンゲリオン。「瞬間、心、重ねて」をコマ送りにして二人でため息をついたような記憶がある。いや、「ようやんなあ」と呆れられたのだっけ。もう思い出せない。

 

大学で一人暮らしをはじめることになって、引っ越しの荷物の中にエヴァンゲリオンのVHSを詰めて行った。食を大事にするが節約家の親が炊飯器は比較的いいものを、そしてテレビの視聴環境としてよく分からないメーカーの小さなテレビデオを買ってくれた。その後の活用っぷりから言って、クオリティは絶対逆の方がよかった。ある日、数少ない大学の友人にふとエヴァンゲリオンのことを話すと、その子はエヴァンゲリオンのことを知らず、なおかつとても興味を持って見たいと言い出した。私は翌日有機化学だか無機化学だかの試験を控えていて一夜漬けをしようとしていたけど、まあすぐに飽きるかなと思って彼女を部屋に呼び、エヴァンゲリオンを流すかたわら試験勉強をした……が、できるはずもなく、しっかり見てしまった。しかも彼女は全く飽きることなく、結局ほぼオールナイト上映になった気がする。とにかく何度も麦茶をおかわりしては「お茶飲んでると全然眠くならないんだよねー」とご機嫌で言っていたことを覚えている。あと、何度も「ごめん、試験勉強大丈夫?」と気遣ってくれたけど、私がその度に「大丈夫!」と答えていたことも覚えている。そして翌日の試験は落とした。多分これが私が専門系で落とした唯一の単位だったと思う。必須じゃなくてつくづくよかった。

 

大学時代は基本的に暗黒大学時代だったもので、記憶があやふやになっている部分が多い。旧劇場版もシーンなどは覚えているから絶対観たはずなんだけど、いつどうやって観たのか全く思い出せない。

 

大学を出て、大学院を出て、かろうじて滑り込んだ就職先のために東京に来て、新劇場版が公開された。ここからは全部映画館に観に行った。

序は、正直なところ「こんなもんかな」と思った。映像的にはかっこいいし新しいところもあるけど、テレビ版の話を出ていないように感じた。

そんなもんで破を観に行くのにはちょっとネガティブだったんだけど、せっかくだしということで観に行って大興奮した。その時の感想はこのブログに書いてある。昔の自分の感想ブログというものはなかなかいいものですね。

そして満を持して観に行ったQでとてもがっかりした。画面が全体的に暗いし、お話も暗いし、カヲルくんと連弾するのもよく分からないし。

破はBlu-rayを買ってたまに観たりしてたけど、Qは映画館で一度観たきりのままだった。シン・ゴジラはよかった。

 

そうこうするうちに驚くべきことに9年の月日が経っていたらしい。今でもちょっと信じられない。NHKでノーカット放送などがされたので、ようやくQを見返すなどした。

 

そして2021年3月8日 月曜日。会社は休んだ。3日前の0時にTOHOのサイトの見たことない画面に阻まれつつ、家から一番近い映画館の一番大きいスクリーンの朝10時の回のチケットをおさえた。

月曜日にもかかわらず、映画館は私と同じような歳の人たちでいっぱいだった。全員が初見で、おそらくネットの評判とかも目にしないようにして、これから何が起こるのかと祈るような気持ちでスクリーンに向かっていた。

 

話は結局よく分からなくて考察とかはできないんだけど、なんとなく感覚として、こう、やりたかったことをやって、設定は逆算でなんとかしたのかもしれないという感じがした。

話が進むにつれて否応にも思い出されるテレビシリーズたち。旧劇場版たち。そして一人ひとりが答え合わせをして去って行く。中にはマリとかカヲルくんとか謎が深まったキャラクターもいたけど……。そして絵コンテになる描写はテレビシリーズの最後の方そのまんまで、あ、これがリピート記号か!そういうことか!となる。

テレビシリーズでは「すべてのチルドレンに、おめでとう」となって、何がおめでとうだよ!と分からないまま終わったけど、今回やっと分かった。

そしてシンジくんたちとともに、観ている我々が、映画が終わった時にはチルドレンではなくなってしまっていた。

大人とは何か?シンジくんがスーツだから大人というわけではないけど、マリに「今日もかわいいよ」だか軽口を叩くのは明らかに大人だなと思う。これまでのシンジくんでは考えられなかったことだ。シンジくんの首にチョーカーが付いていることから、勿論そのまま大きくなったわけではなくてあくまでもまだ精神世界の中にいることが示唆されているけど、その場でシンジくんは大人になることを決めた。

きっとこの後、ディラックの海からあらわれたときみたいに、シンジくんとマリはどこかの浜辺にでも出現するのだと思う。それが元の世界なのか、全然新しい世界なのかは分からないけど、きっとそこでシンジくんは生きていくのだろう。