ここ数ヶ月で観た映画の感想

映画を観て、色々と思うところがあったけどどこにも記録していなかったから書いておこうかなあと。全部観た人前提でネタバレあり……だと誰が読めるか分からないけど、なんせ個人的なアウトプットなので。観てないけどネタバレ気にしないよ、という奇特な人でも読んでいただけるといいと思う。

 

 

サマーフィルムにのって

これはよかった。この夏観た映画の中で一番よかったと思う。まず、登場人物が全員楽しそうなのがいい。主人公チームもいいし、一見めんどくさそうな青春映画チームもいい。ブルーハワイちゃんが実は青春モノ好きで、それがすぐさま報われるところもいい。まさに青春!

そしてタイムトラベルものとしてもかなりいい。特に初対面の凜太郎の「ハダシ監督」っていう台詞。なんでハダシのことを知っていてなおかつ監督呼ばわりなんだろうという違和感がそのまま伏線になって、さらにこの映画の先の主人公の未来と凜太郎との距離の遠さまで示唆しているという非常に効果的な一言だった。これが最初に来ているおかげで、この素晴らしいきらめきの瞬間は過去であり失われることが分かっているけど今であり、でもやっぱり過去なんだなという切なさが常につきまとう映画になっていた。まさに青春!

あと、タイムトラベルしてきた人に気付くのってだいたいは主人公の仕事なのに、この映画ではSF大好きな友人であるビート板ちゃんの方が先に気付いて未来人とコソコソ話していたというのも小技が効いていてよかった。たしかになー、ハダシはこういうの気付かんよなー、気付くとしたらビート板よなー、みたいな納得感がある。

河合優実さん演じるビート板ちゃんはミステリアスな文学少女の雰囲気がすごくよかったしかわいかった。祷キララさん演じるブルーハワイちゃんは大柄でおおらかで乙女な剣道少女でこれまたすごくよかったしかわいかった。しかも祷キララさんどっかで見たことがあるなーと思ったら『ギョエー!旧校舎の77不思議』の舞台に出ていらっしゃった。伊藤万理華さん演じるハダシ監督はちっちゃくてくるくる動いてかわいくて最高だった。ハダシ監督かわいいなーお耳に合いましたらの人に似てるなーと思ったら同じ方だった。ついでに監督も同じ方だった。松本壮史監督。というわけでお耳に合いましたらとセットで観るとより楽しい。

それにしてもタイムトラベルものの最後はタイムトラベラーが元の時代に戻っちゃうことによるお別れが見せ場になることが多いけど、サマーフィルムにのってのお別れはかなりぐっときた。こんな……こんな一緒に映画を作ってきて、お別れって、そんなのないよ!と思った。HUGっと!プリキュアのルールーとえみるのお別れくらい悲しかった。

未来の映像は全て数分になっているという描写はちょっとやりすぎかなーさすがにそうはならんやろというのが少し気にはなったけど、全体としてとてもいい映画だった!久々に映画観たなー!という感じになった。

 

子供はわかってあげない

サマーフィルムにのっての一週間後くらいに観に行ったのかな?元々この原作の漫画が大好きだったし、脚本もみいつけた!で大好きなふじきみつ彦さんだったし、監督も横道世之介で大好きな沖田修一監督だしで、情報が発表された時から1年以上楽しみに待っていた。いよいよ観に行く前には漫画を読み直して予習して……としていたんだけど、それがよくなかったのかもしれない。正直、この映画のことがまだうまく消化できていない。

映画としてはすごくいいんだと思う。上白石萌歌さんの魅力がこれでもかと発揮され、トヨエツ演じるお父さんとの微妙な心の交流が描かれ、千葉雄大さんなど他の役者さんたちの演技も素晴らしく、やたらと凝ったコテコのアニメも見どころ満載だ。

でも、原作の漫画のファンとして、乗り切れなかった。

映画はコテコのアニメから始まる。何やら深刻そうな場面を見せられ、なんだなんだと思っているうちにコテコに没頭する上白石萌歌さんの顔が大写しに。この瞬間、私は「あ、肉体だ」と思った。私の中でサクタさんはほわほわしたかろやかなイメージだったんだけど、圧倒的な肉体感を持って上白石萌歌さんがいた。これ、は、サクタさん……?斜めに映ったテレビ画面ではコテコのエンディングが流れ、その中でコテコと一緒にモルタルとコンクリ太郎がはしゃいでいるのを見てなるほどこのキャラ達はプリキュアにおける妖精的な位置づけでコテコと一緒にずっと冒険をしていてその子たちの大事なシーンだったのかと思い至って先ほど見たアニメに時間差で感動しつつ、なおかつ上白石萌歌さんへの戸惑いは消えない。上白石萌歌さんだけではない。もじくんもなんかでかい。そしてイケメン。映画だからイケメンなのはしょうがないとして、もじくんはもっと素朴なイメージだった。トヨエツもでかい。古びた日本家屋に明らかにサイズが合っていない。そしてがっしりしている。もっとこう、堺雅人さんみたいな線の細いイメージだった。探偵さんを千葉雄大さんにしたのもよく分からない。いや、千葉雄大さんはいい。ゴセイジャーファンとして嬉しかったし、現代の女形と言っていいような色っぽい演技も素晴らしかった。でも原作通り一見女性に見えるような設定にしなかったのはどういうわけか。

そもそもキャラクターが違う。探偵さんは真面目かつお間抜けなところもありつつ抑えるべきところは抑える人物だったけど、シリアスさが全面に出ていたし、お父さんもかなり違うし。それを言い出すと全員違う。じんこちゃんもみんなの自己紹介シーンで「あぼりじんこです」ってフルネームを言うのがおかしくかつじんこちゃんの人柄を感じさせていたのに、なぜか下の名前だけになっているし。

お話の中でお金持ち出し事件をばっさり削ったのも、キャラクターを変えたのも全部、多分「サクタさんとお父さんとそれをとりまく人々の夏の出来事」を描きたかったからなのかなあと思うんだけど、なら「子供はわかってあげない」にする必要なくない!?と思う。

映画としてはいいんだろうけど、原作の映画化を期待して観ると完全なる二次創作だし、そもそも私とは解釈違いすぎる……ということで、まだ消化できていない。時間をおいて観るとまた印象が変わるかもしれない。

 

レミニセンス

私はいろんなことを忘れがちだ。特に、好きな人との何気ない光景とか、すごく幸せでとっておきたい記憶ほどすぐに忘れる。なので自分の記憶を取り出して再度体験できる装置があるという時点でこのお話にすごく惹かれた。

話は、記憶再現屋さんをしている主人公のもとにある日美女がやってくるところから始まる。主人公と美女はたちまち恋仲に……って、いやいや展開早すぎない?明らかにこの女、怪しいでしょ。それともこの文化圏ではよくあることなのか?と観ていたらはたして女は目的があって主人公に近付いていたのであった。主人公は忽然と姿を消した美女を探すため僅かな手掛かりをたよりに単身ギャングのもとへ……と、ここまでは「ハードボイルドだぜえ」と観てたんだけど、主人公はあえなくギャングに捕まり大ピンチに。それを救うのがビジネスパートナーのかっこいい女性。この時点で私のこの映画の見方は「美女に振られた情けない男、がんばる」に変わる。

情けない男、なんやかんやあって最後は切ない事実が明らかになってぐっときて、という展開。

なんやかんやがけっこう長い。エピソードのいくつかを端折っても映画としては問題なく成立しそう。だけど、端折られていなくて、この冗長さがむしろ記憶とそして人生だなという感じがしていい。

あと、映画の前半で主人公と美女が恋仲になっている時期のデートの映像が流れるんだけど、それがやたらときらきらしている。一緒に観に行った家族が「なんかCMみたいだった……」ともにょもにょしてたので「ディオールの香水のCMじゃない?」と聞いたら「そう!それ!」と言っていたので、ディオールの香水のCMっぽいと思っていたのは私だけではなかった。でも、それでいいんだと思う。人生において大好きな人といる瞬間は、みんな主観的にはディオールの香水のCMのような気分だし、それが映像としてあらわされていたのだと私は解釈した。

そういえば、記憶というのは主観的なものだ。同じ光景を見ていても人によって見ているものは変わるし、記憶は改竄される。でもこの映画の記憶再現装置では、その時本人が意識しなかったものも再現され、記憶の改竄もなく、完全に人の目と耳と脳を単純なセンサと記憶領域として扱っているのが特徴的で面白いなとおもった。

この映画、家族はイマイチだったらしいけど、私はけっこう好きだった。

 

オールド

予告編観た時点で「いやあ……バカ映画でしょ」と思っていたけど、家族が行きたいというので行った。結果、予定を上回りも下回りもしない、思った通りのバカ映画だった。

ビーチにバカンスに来た家族連れ。はしゃぐのもつかの間、異変に気付く。「このビーチ、時間が早くすすむぞ……!」

そこから始まるなんやかんやと悲喜こもごも、まあ、そうなるよねえという感じで驚きも何もない。なんでそんな現象が発生するかについては特殊な鉱物の磁力らしいので気にしてはいけない。誰が何のために主人公たちをそんなビーチに閉じ込めたのかについては映画中でちゃんと答え合わせがなされていてよかった。でもなあ。にしてもちょっと計画が雑すぎないか?とは思う。

お子さんたちがどんどん成長していく時に、精神年齢も身体の歳相応に落ち着いているっぽいところが気になった。そんな、人間、身体が年老いたからといって48時間そこそこで経験やインプットなしで精神年齢変わるか?

当時2歳くらいだったチビちゃんが成長して「私、プロムも知らないのよ」と泣くシーンがあるけど、2歳くらいのチビちゃんがプロムを知っているものなのだろうか。それともアメリカのプロム文化は思ったよりも強力で2歳に対しても絶大な知名度を誇るのであろうか。

ただ、この台詞はCOVID-19で学校行事や学生の間にやりたいことがことごとく潰れてきた現代の若者の気持ちの代弁かなと思って、そこは少しぐっときた。

でもやっぱ全体的には何もなかったなあ。この映画で一番よかったのはエンディングの文字のフォントが変わっていく映像だなあ。

とはいえ、私はイマイチだったけど、家族はこの映画、けっこう楽しめたらしかった。

 

鳩の撃退法

開始直後、「あ、富山の映画や!?」となる。私はちょっとした縁があって、富山がけっこう好きだ。

鳩の撃退法、なかなかよかった。とりあえず藤原竜也は大金を手に入れて、そして失う役が似合っている。西野七瀬様がかわいくていっぱい出てきて嬉しかった。そして夜の帝王トヨエツはさすがの貫禄だった。トヨエツ、久しぶりに会った娘にオロオロする役じゃなくて、こういう役がしっくりくる。

最後の答え合わせで登場人物たちの行動がピースにはまっていくさまは、ちょっと『夜は短し歩けよ乙女』を思い起こさせるほどのすっきり感だった。

東京のバーで語られる現在と回想の富山の話とが小気味よく切り替わり、だんだんとまざりあって行く様もよくて、話としてはけっこう複雑なことをしているはずなのに全然ストレスなく話に入れて見事だった。原作の小説も気になった。

 

マイ・ダディ

一番最近観た映画。ムロさんすごい、に尽きる。娘さん役の中田乃愛さんもよかった。永野さんが出てたのも嬉しかった。

卵の殻を握りつぶして、その後集めるシーンに一番ぐっときた。だって、その卵の殻は出会った日の幸せな思い出で、一緒にいる時も、亡くなった後も、ずっと大事にしてきたのに、幸せが嘘だったと分かって衝動的に握りつぶしちゃったけど、でも大事な大事な宝物で取り返しはつかないし、そもそも出会ってからのこの時間が取り返しがつかないし、奥さんが亡くなった後も奥さんと娘さんを愛してきたし、という、色々が詰まっていた。

あと、食堂に行って、娘に似たそこの家の娘さんを目撃し、ちくわカレーをメニューに見つけて、間違いない、となるところ。

娘さんのボーイフレンドがまた人間ができたすごくいい子だし、でも最後に泣いちゃってずっと不安で隠してたんだね、というのもよかったし。

そういう、一つひとつはよかったんだけど、でもどうしても江津子さん迂闊すぎやしないか?てか気付くだろ?というのが気になってしかたがなかった。気付かないほどだとすると、ムロさんとそんなに早く……?というのもこの映画でのムロさん演じるキャラクターを考えると違和感がある。

あと、白血病というのも、帽子を被っているのに睫毛……までは大変としてもせめて眉毛は薄くするなり見えなくするなりした方がいいのでは、あとマスクもしておいた方がいいと思う、けど演技で表情を見せるためにそうしたんだろうなあ、とか「移植やめる」はこのタイミングじゃないでしょとかあって、白血病白血病じゃなくて単なる舞台装置として必要なものだったのかなというご都合主義さを感じていまいち乗り切れなかった。

ただ、私があまり人が亡くなる系の映画を観たことがないので、こういうものなのかもしれない。