むきゃー

配属にあたって引っ越しをしなければいけないわけだが、その荷造りが全然終わらない。寮から寮への引っ越しだから大型家具も無いことだし、荷物をぽいぽいと段ボール箱に詰めればいいんだよね、と思ってたんだけどそれがなかなか詰まらないわけだ。なんでだろう。なんでかしら。


おかげで数日前から睡眠時間がとても短い。ねむたい。


明日は別れ別れになっちゃう同期のみんなで大々的に飲む予定だから、今夜の時点では荷造りなんて完璧に終わっていて悠々と早めに寝る予定だったのに。


まあそんなこんなでしくしくと荷造りをする。元々お片づけとか整理整頓とかが大の苦手であるからして、荷造りも「めんどくさい」を通り越して苦痛を感じる程だ。
でもやらなきゃいけないので頑張る。


そうやってなんとか何箱目かに詰まり終わった段ボール箱をずるずると廊下に引きずり出しているとき、同期のマミちゃん(仮名)が通りかかった。
人恋しくなっていた私はこれ幸いとマミちゃんに
「終わらないよー」
と泣きつく。
マミちゃんはどれ、と私の部屋を覗くなりぼそりと
「あと5時間ってとこだねー」
と言った。


それが大体22時頃の話。えええ、ということは頑張っても3時までかかるってことですかー。


そして5時間宣言の動揺もさることながら、私が驚いたのは彼女が「5時間」と定量的にこれからの仕事を見積もったこと。


実は私はこれまでもスキさえあれば通りかかった同期たちに荷造り中の部屋を見せてきた。だって荷造りって大変だし、その大変さを共有したかったんだもん。
そうして私の部屋を見せられた友人は口々に「うわー、まだまだ大変そうだねえ」とか「段ボール多っ」とか感想を述べてくれたわけだ。私もまたみんなの部屋を見せてもらったら「うーん、これはこれは……」とか感想を述べてきたし、まあそれが一般的な反応だと思う。


そんな中、マミちゃんだけは「5時間」と言った。


実はこのマミちゃん、かなり優秀。研修中に受けた難しい資格試験もばんばん受かっちゃう。
勿論、頭がいいとか継続して努力できるとかも欠かせないけど、彼女は仕事量から時間を見積もるのが得意でなおかつその習慣が染み付いているんじゃないかなあと思った。だからこそ私の部屋をぱっと見た時に「5時間」という言葉が出てきたのだろう。


一方私は時間を見積もる作業がとても苦手だ。
まず、ダラダラしている時と追いつめられて火事場の馬鹿力状態の時とでの生産性の差が違いすぎる。なおかつ、そこそこのスピードで作業し続けることができない。余裕があるとすぐにダラダラしちゃうし、かといってフルパワー火事場の馬鹿力状態だとすぐに気力が切れてしまう。
結果、ダラダラと時間がかかりつつも「いざとなったら火事場の馬鹿力形態で頑張ればすぐに終わるさ」と楽観視してしまう結果になるのだろう。そしていざのときは火事場の馬鹿力形態になっても間に合わなく、結局どこか妥協して帳尻を合わせたりするのだ……。


お勉強面では最近の試行錯誤によってけっこう時間見積もりができ、なおかつそこそこのスピードで作業し続けられるようになってきた。
これからは生活などの面でも時間見積もりができるようになろう。


そしてそのためには「火事場の馬鹿力形態」などはあてにせず、シビアに現実を見ることが重要になるのであろう。



では荷造りに戻るかねえ。このパソコンも梱包しなきゃいけないんだよねー。